TENET テネット 感想

 久しぶりに、デカい映画館でデカい映画を観てきました。クリストファー・ノーラン監督の「TENET テネット」。理系の友人に行こうと誘われて行ったのですが、別の友人の「理系はノーラン好きがち」という言葉もあながち間違いじゃないなと。(この映画は別に理系映画ってわけではないけど)

 

 まずこの映画の邦題、付けた人の配慮が感じられて面白いですよね。「テネット」じゃなくて「TENET テネット」。おそらく「TENET」の回文を維持しつつ、日本人にもわかるように読み方足したらこうなったんでしょうね。

 

 わからない映画と言われているこの作品ですが、実はそんなことない。話自体はすごく分かりやすい冷戦スパイ映画です。わからないと言っている人は、話がわからないんじゃなくて、何故そうなっているのかわからないだけじゃないでしょうか(なんでこうなってるのかを映画を考えながら見たら、何もかもわかならくなりそう)。どうなっているのかわからないけど、何が起きているのかはわかる、ノーランはこの作品をそれで映画として成立させています。でもこれ、早い段階で作中で答えを与えられているんですよね。何故そうなっているかは理解しなくていいと。とにかく未来からそういう技術が来たから感覚的に上手く使えと。そういうものだと受け入れれば、この映画はわからない映画から一気にわかりやすい映画になります。一番の難所である、最後の敵味方、進行逆行入り乱れの戦いも、色分けされてて理解しやすいように出来てるじゃないですか。(麻雀のルールを知らなくても「咲-Saki-」を楽しめるみたいにね)

 何故そうなっているのかを理解しなくてもいいと言いながら、理解しようとするなら理解できるようには作っていると思います(信じてるだけとも言う)。この映画において、全く本質ではないけど、一つ一つの動きを逆行か進行か考えるのも面白そうですね。色々な設定も、熱力学や統計力学に沿って出来ているんじゃないかな。わからないけど。

 

 この映画でちょっと「おおっ!」っとなったことがありまして。「逆行」が可能となった世界では、なんと情報を持っていることが不利に繋がるんですよ!従来のスパイ映画と言ったら、情報の奪い合いみたいなところがあったと思うんですけど、この映画ではその情報の扱い方が真逆で面白かったんですよね。時間だけじゃなくて情報の扱いまで逆転させてしまうのかと。そのことをことさら主張せず、スマートに見せてしまうところが格好いいですね。

2020年7,8,9月にみた映画

 7月は3本しか見れませんでした。思い返せば7月は、一生web小説読んでるだけでした。院試勉強も6月で飽きちゃって、院試落ちた時の言い訳考えながらずっとスマホ弄りしてましたね。幼女戦記とか薬屋のひとりごととかが面白くて。8月はもう何もしてなかったような気がします。9月の合格発表までの暇つぶしに、なろうの累計ランキング見て、気になるのをダラダラと読むだけの日々でしたね。立てた勉強計画も全然実行できず、院試受けた時の手応えも8割落ちたなって感じだったんで、割と本気で落ちた時の言い訳と浮いた1年のやりたいこと考えてたんですけど、結局受かってました。流石に第一志望の研究室ではなかったけど、少人数で結構面白そうなとこ行けてホッとしました。

 

2020年7月にみた映画

 

1 コンスタンティン(2005)

 フランシス・ローレンス監督。この人、これが映画監督デビュー作らしいです。終始、主演のキアヌ・リーブスの格好の付け方が半端じゃなかった。あの煙草の吸い方、ぼくが真似したら滅茶苦茶馬鹿にされそ~(笑)

 

2 マトリックス(1999)

 監督はウォシャウスキー姉妹。押井守の「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」に影響を受けたというのは有名な話ですね。画面の中から出たり入ったりするカメラの動きが印象的でした。虚構と現実ってやつですかね。作品全体としては非常に楽しい雰囲気でした。アニメでよく見る演出を実写にするとこうも楽しくなるのか。特に訓練シーンは音楽も相まって、作品内で最も楽しい場面なんじゃないでしょうか。追いかけっことか早打ち対決とか他にもいろいろ、詰め込みまくりの欲張りセットって感じですね。

 最後にヒロインが出てくるところあるじゃないですか。この作品内でヒロインがちゃんと役割を持っているってのはわかるんですけど、僕には、ただの女があの場面で急に救世主の彼女面しているように見えちゃって、なんか笑えるシーンになってるんですよね。あのシーンを見て、僕以外の人はどう思うのか気になります。

 

3 劇場版 幼女戦記(2019)

 急に思い立ってweb版の幼女戦記をひたすら読んでたんですけど(これが滅茶苦茶面白い)、モスクワ襲撃のところまで読んで、なんか見たことあるなってツイッターに書いたら劇場版だよって教えてもらいました。この映画は公開した時に見て、面白かった記憶はあるけど、正直戸松遥のことしか覚えてなかったので見直すことにしたんです。

 アフリカ遠征がトントン拍子すぎて何もなかったかのように扱われてるは、ほんのちょっと残念でした。戦略を戦術で覆すところとか見たかったな~。web版にはヴィクトーリヤ・イヴァーノヴナ・セレブリャコーフが出てこなかったんで、web版と書籍版って結構違うと思うんですけど、書籍版がそうなのか、映画にした都合でこうなったのか。でも、その行き過ぎたトントン拍子加減が、ターニャたちが東部戦線にいきなり送られて唖然としている感を引き立てているような気もします。

 連邦の兵士たちが次々と突撃させられているのを見て、ターニャが「人的資源をなんだと思っている!」って言う場面があったんですけど、ターニャの全てが詰まっているようなセリフでニヤリとさせられました。

 

 

2020年8月にみた映画

 

1 オーガストウォーズ(2012)

 ジャニック・フェイジエフ監督のロシア映画。戦う母親クセーニアを演じるスヴェトラーナ・イワノーワがとにかく可愛いのでお気に入りの映画です。ずっとBD買おうと思ってたんですが、値下がりもあんまりなかったので、ついにAmazonでポチりました。実際に起きた南オセチア紛争(別名8月戦争(August War))を舞台にしているみたいです。なんで邦題が「オーガストウォー」じゃなくて、「オーガストウォーズ」なのか疑問ですけど、なんか意味があるんですかね。

 

2 グラディエーター(2000)

 監督は「ブレードランナー」のリドリー・スコット。主演は「L.A.コンフィデンシャル」で、女を殴る男は絶対許さない熱い男バド・ホワイト刑事を演じたラッセル・クロウ。ふと思い立って高校の世界史の便覧をペラペラ捲って見ていたんですが、そこで紹介されていたので見てみました。結論から言って、今年見た映画の中で一番面白かったです。後で述べる「マスター・アンド・コマンダー」もかなり好きなのですが、ラッセル・クロウが好きなだけなのかな。

 「ブレードランナー」のように、ディテールが凄いです、この映画。主人公の周りから世界を作っていくのが普通の映画だと思うんですけど、この映画は世界を作ってから主人公を動かしているような緻密さで圧倒されました。僕は世界史はあまり詳しくないので、そこら辺勉強してから、また見返して感想を詰めていきたいですね。

 

3 この世界の片隅に(2016)

 片渕須直監督のアニメ映画。テレビで放送したのを親が録画していて、たまたま見ました。僕は日本の反戦映画は露骨で好きじゃなかったんですけど、この映画はさりげなくていい映画だったと思います。直接的な表現で反戦を叫ぶのは簡単で楽ですよね(例えば主人公に「戦争なんてやめちまえ」と叫ばせるとか)。でもそうすると、どうしても現代人が当時に行ったような映画になってしまって、ぼくは好きになれないんですよね。この映画はそこら辺が本当にさりげなくできているんです。原爆が落ちるのはすずの隣の町だし、不発弾で死ぬのはすずの隣にいた晴美だし。すずの生活が戦争によって徐々に変化していく様を見せるだけで反戦映画になるんですよね。

 実際当時の人たちには厭戦感情はどのくらいあったんでしょうか。厭戦感情が一般的であったなら、「君死にたまふことなかれ」と歌った与謝野晶子はそこまで有名になることはなかったんじゃないでしょうか。記憶は変化するものなので、戦争を経験した人へのインタビューもそこまで参考にできませんし、やはりそういう点で歴史研究には当時の日記とかが重宝されるんでしょうね。

 それはさておき、のん演じる主人公すずはいいキャラでした。芋っぽい女性がふとした時に見せる色気にはドキッとさせられますね。

 

4 マスター・アンド・コマンダー(2003)

 監督は「トゥルーマン・ショー」のピーター・ウィアー。これも主演はラッセル・クロウ。歴史ものの頼れるリーダーは全部この人でいいんじゃないかな。舞台が大体船の中だったから、スケールでは敵わないんだけど、この映画も「グラディエーター」の如くディテールまで作りこまれていた。特にアケロンに乗り込むシーンは必見。この映画ももう一度見返したい。伯爵か公爵の息子の士官候補生がいい味出してたのでそこにも注目してほしい。今のところ、これと「グラディエーター」が今年見た映画のツートップ。

 

2020年9月にみた映画

1 ハクソー・リッジ(2016)

 この映画、好きな人は好きだと思うんですけど、僕は本当に大嫌いでした。ピクサーのアニメ見る気持ちで見てたらそこまで嫌いにはならなかったと思うけど、普通に戦争映画見る気持ちで見たから大失敗でした。この映画、馬鹿にしてんのかってぐらい全てが露骨。「プライベートライアン」に並ぶ残虐なシーンとか言われてますけど、おままごとをしているようで、絵から悲壮感全く伝わってきません。もっと体系的にこき下ろせたらいいんですけど、僕にはその術がないのでここまでにしておきます。体系的な話が出来て、「ハクソー・リッジ」嫌いな人に話を聞きたいです。

2020年6月にみた映画

6月に見た映画の感想をちょろっと書いていきます。

 

1 サイコ(1960)

 アルフレッド・ヒッチコック監督。うる星やつらwikiをなんとなく眺めていたときに、この映画のパロディ回があることを知った。それを確かめてみようと思いこの映画を観たのだけど、え、ホントにパロディ回ある?うる星やつらは第106回まで見ているのだけど、全然わからない。もしかして第106回より後にあるのかな。

 それはさておき、あのシャワーシーンは「セブン」のラストシーンを思い出させる。観客に映ってないものを見たように錯覚させる技術は、CGと特殊メイクのゴリ押しが出来なかった時代にしか生まれ得なかったものだろう。それを考えると、それを1995年にやった「セブン」のあのシーンは乙なものだ。

 

2 人狼 JIN-ROH(2000)

 沖浦啓之監督。「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」でキャラクターデザインや黄瀬和哉と共に作画監督やってた人。これが初監督作品らしい。脚本は押井守。この映画のどんよりとした雰囲気とか装備とかかなり好き。僕も御多分に漏れず、押井守の演出的なところじゃなくて、軍事とか思想とかを信仰しているオタクなんだろうな(照)絵本が教典となっていて、関係性のミスリードを狙っていたところが(こちらはミスではなかったわけだが)、「リズと青い鳥」っぽいなと思ったりもした。イノセンスの最後の助けられた少女とほぼ全く同じような叫ぶセリフがあって、とてもシリアスなシーンだったのにちょっと笑ってしまった。イノセンスのあの少女も武藤寿美さんだよね。この映画が縁となって沖浦啓之と結婚したそう。

 

3 砂漠の鬼将軍(1951)

 ヘンリー・ハサウェイ監督。砂漠の狐ロンメルを演じるのはジェームズ・メイソン(「ロリータ」のハンバート・ハンバート教授とか)。WW2の映画は高校の頃色々見たんだけど、結構適当に見てたから記憶がごっちゃになっている気がする。そこら辺もう一回見返したくなった。

 

4 ウォーターワールド(1995)

 ケヴィン・レイノルズ監督。USJでお馴染みのアレ。温暖化か何かで海面が上昇して、地球全土が海に覆われた世界が舞台の終末映画。世界観の第一印象は海版「怒りのデスロード」でした(最初に見た終末ものを親だと思いがち。「怒りのデスロード」がこれをオマージュしたのか、終末映画あるあるなのかはさておき、スモーカーズが追いかけてくるとことか、民衆に水やるところとかそっくりでしょ)。土が貴重って発想は出てこなかったから驚いた。確かに考えてみたら土ないと農業出来ないよね。海底に沈んでた土って農業に使えるの?とか疑問もあったりしたけど、船のギミックとか悪党の魔改造武器とか見るのは面白かったです。後から知ったけど悪役の眼帯おじさんがデニス・ホッパー

 

5 劇場版 のんのんびより ばけーしょん(2018)

 川面真也監督。脚本は吉田玲子。僕が吉田玲子好きすぎるだけかもしれないんだけど、最近のアニメ映画で面白い作品だいたいこの人じゃない?

 福引で沖縄旅行を当てて、沖縄に行って帰る。出会いはあるが、特に事件が起こるわけでもない、当然サスペンスなんて存在しない。それだけの映画だけど、それだけでいいのがのんのんびより。それだけなのがいいんだよなあ。

 

6 A.I. Artificial Intelligence(2001)

 スティーヴン・スピルバーグ監督。人間と同じ愛情を持つ子供型アンドロイドのデイビッドを演じるのはハーレイ・ジョエル・オスメント。この子役、「フォレスト・ガンプ」のガンプの息子役でデビューし、「シックス・センス」のあの少年も演じてる。それはそうと、憎たらしい本物の子供のマーティンがものすごくイケメンだったなあ(笑)

 序盤はよくあるSFものって話だったんだけど、途中からあっちこっち色んな方向に行きだす。ゴミ捨て場に壊れたロボット達がわらわらと現れて、自分を自分で修理しだしたときはちょっと笑った。おもちゃのテディは滅茶苦茶賢いし、デイビッド以外のロボットが人間っぽかったのはなんだったんだろう。特に、ジュード・ロウ演じるセクサロイドは本当にいい味出していた。ジュード・ロウって「ガタカ」でも遺伝子操作された完璧人間役だったし、整い顔なのかな。

 この映画では、デイビッドが自殺しても死ななかったように、ロボットは死ぬことが無い永遠の物として書かれているが、実際のところ機械に永遠性はあるのだろうか。素材の耐久度的にもそうだし、道具である以上、技術の進歩に伴い時代遅れになったものは捨てられていくんじゃないだろうか。ロボットの永遠性は、ロボットに結構な人権がある世界でしか成り立たなさそう。まあ、人間そっくりなアンドロイドを作れる世界ならそこら辺の問題も解決しちゃいそうだし、ロボットに永遠性があってもいいのかな。

 

7 生きてこそ(1993)

 フランク・マーシャル監督。この映画、小学生ぐらいの頃に一回見たと思うんですけど、赤い靴とガラスの破片で人肉食うとこだけしか覚えていませんでした。多分、小学生の僕はそこが一番印象に残ってたんでしょうね。

 21歳になった今、この映画を観て、アンデス山脈の神々しいまでの美しさに感動した。不謹慎だと言われるかもしれないけど、この映画を観て、山に登ってみたくなった人も多いんじゃないかと思う。アヴェマリアを流し、山頂に刺さった十字架と連なる山々を映したエンディングを、もう忘れることが出来ないだろう。

 この映画は、語りのシーンを飛ばせば、最初飛行機の中から始まり、その後ずっと白銀の世界が舞台となっている。イーサン・ホーク(「ガタカ」のヴィンセントとか)演じるナンド達が麓を目指し、初めて映る緑がとても印象的だった。「ゼロ・グラビティ」のラストとか、このシーンの影響を受けていたりして。

 

8 キャスト・アウェイ(2000)

 「フォレスト・ガンプ」、「BTTF」のロバート・ゼメキス監督。今回のトム・ハンクスフェデックスの凄腕システムエンジニア現代社会で常に時間と戦う彼が、ある日突然無人島に投げ出される。あらすじだけ見て、またトム・ハンクスが持ち前の知力と発想力を発揮して、またなんかやっちゃいました?って感じに無双していくのを予想してたけど、そんなことはなかった。無人島だから普通に苦労してる。火を起こすところとかそれはもう苦労してんなって感じが伝わって結構笑った(ウィルソンとの出会いのシーンっていうのもあるけど)。他の無人島出てくる作品とかだと、あっさり火が着いちゃったりしている印象あるんだけど、この作品はそこら辺の苦労がひしひしと伝わってくる。怪我とかも本当に痛そう。その点で言うと、不時着のシーンも同じような意味で引き込まれた。事故が起きてから墜落までがとにかく長い。トイレの扉が開いて、突然吹き飛ばされそうになってから、マスクを付けたり外したり、立ったり座ったり、荷物が行ったり来たり。そうこうしてよく分からないまま墜落した後も、暗い海の中長時間波に揉まれ続ける。無人島に着くのも、目が覚めたら知らない浜辺にいましたって感じじゃない。漂流といえば、「事故発生→なんやかんやで気を失う→目が覚めたら嵐は去ってて浜辺に打ち上げられてる」っていうのが定番になっていると勝手に思っているんだけど、この映画では主人公はずっと薄く意識を保ち続けていた。だから漂流にリアルっぽさが出ていたんだと思う。

 話の流れとしては、過去に観た作品の中で似てるのを探すとしたら、事故を経て人生観が変わるという点で「アイアンマン」が真っ先に思いついた。

 プレスリーのAll Shock Upで始まり、Return To Senderで締める。Return To Senderは本当にそのままでしたね(笑)

ラストムービー 感想

 デニス・ホッパーの「ラストムービー」を見てきた。友人に連れられて劇場に足を運んだのだけど、これまた面白い映画だった。話の導入はこんな感じ。

 

 その地でのハリウッド映画の撮影がクランクアップを迎えた。役者もスタッフも皆アメリカに帰ったが、スタントマンのカンザスはひとり残った。彼は現地に女を作り、しばらく幸せな日々を過ごしていた。そんなある日、神父に言われて街を見てみると、何やら異様な雰囲気に包まれていた。道の真ん中で人と人とが殴り合い、そのまわりで祭りのように人々が大騒ぎをしている。神父は、あの暴力は君たちアメリカ人が持ち込んだものだと言う。あれは映画祭りで、街の人たちは映画撮影の真似をしているのだと。神父は今すぐやめるよう説いた。カンザスは芝居の暴力と本物の暴力の違いについて教えた。しかし、映画の暴力に当てられた彼らは止まらない。カンザスは次第に狂気に飲み込まれていく。

 

 序盤の映像はとにかくごちゃごちゃしていた。葬式、教会、祭り、銃撃戦、パーティ、聞こえてくるのは知らない言葉。断片的にしか状況はわからないのだが、異国ということはわかる、そんな状態。

 

 終盤近くの、カメラが揺れ、火花が回り、カンザスが逃げ回るシーンは、本当にホラーなのだが、「おい、傷がないぞ」とネタばらししたあとは一気にコメディになる。酔っぱらいという生き物はどこまでも真剣に生きているのだが、他人の視点を通してみると、途端に滑稽に映るのだ。

 自分が泥酔してるときを想像してほしい。きっとそんなにおかしくなっている自覚はないと思う。泥酔しててもちょっと陽気になったぐらいで思考はちゃんとできていると自分ではそう思っているだろう。逆に、自分ではなく友人が泥酔しているときを思い出してほしい。彼らは本当に支離滅裂だ。急に全く脈絡のない話を大声でしだしたりするし、放っておくとマンションのオートロックを開けるために、秘密のコマンドがあると言い出し、インターホンをでたらめに押し出したりする。この映画には、泥酔時の自分の頭の中と、飲み会で友人が泥酔して馬鹿なことをしだしたときの笑いがある。

 

 私の好きなのは、監督役が一生懸命説明してるのを、カンザスが「その動きお祈りみたいだな」と茶化し、泥酔した神父が十字架で突っつくシーンと最後の金鉱の話。

 私を映画館へ連れて行った友人のお気に入りは、終盤のカンザスが走って転んで立ち上がるシーン(たしかにあのシーンは格好良かった)と、最後の「神は遍在する」だ。詩的なとこが好きらしい。

 

END!

院試勉強はじめました

 あと二ヶ月しかないみたいだし、重い腰をあげてようやく院試勉強を始めた。

 院試の過去問のデータは研究室の先輩から貰った。もしこれがなかったら、何をすればいいかわからず途方にくれていただろう。ざっと見てみたら平成十二年から三十一年までの二十年分あった。ありがたいことに平成二十七年の分までは、先人たちが作り上げた解答付きだ。何年分解くのが妥当かわからないが、とりあえず解答ありとなしで、それぞれ(i)群、(ii)群と分類してみた。

 試験は専門基礎aとbに分かれていて、専門基礎aは数学が二問、電磁気1、電気回路、電子回路、物性基礎の六問。この中から五問選んで制限時間は三時間半。専門基礎bは電磁気2に論理回路、自動制御、半導体・固体電子工学の四問で、三問選び、制限時間は二時間半。研究室の先輩曰く、激ムズの問題が出た時に備えて、全部の問題を勉強しておくのが定石みたいだ。

 この中でまともに勉強したものと言えば、電気電子回路の触りと物性基礎の一部ぐらいだろうか。どうにも合格できる気がしなくなってきた。とりあえず勉強する問題に優先順位を付けてみた。

 まず、解けそうな電気回路、電子回路、物性基礎は最優先だ。次に研究テーマに近い半導体・固体電子工学。そしていろんな分野で何かと顔を出してくる電磁気1、2。これらをまとめてα群とした。数学は昔から苦手だったし、避けて通れるなら避けて通りたい。論理回路と自動制御に関しては一ミリも知識がない(なんでこんな状態で四回生になれたの?)。これらをβ群とした。

 ゆっくり予定を立てすぎて間に合わないってのもアレだし、絶対やれないだろうけど、一応二十年分解くつもりで予定を立てることにした。院試まで二ヶ月、ちょうど九週間ある。最後の二週間は、調整期間ってことで、解答のない(ii)群の問題を、時間を測って解いてみることにしよう。残りの七週間のうち、まず四週間を(i)のαに、三週間を(ii)のβに使うことにしよう。(i)群は十六年分ある。十六割る三で、おおよそ五。一週間で五年分、まずはα群から勉強しようと思うから、当分の間は一週間で三十問。授業の課題(卒業単位がまだまだ足りなくて、四回生になっても授業がたんまりあるのです)や調整日として二日の猶予を設けるために、一日六問を目標にしよう。そんな感じで目標が決まった。

 そんなこんなで始まった院試勉強。とりあえず、解答が見やすい平成二十五年の問題をといてみた。専門基礎bの問題はともかく、専門基礎aの問題は、まぁ解ける。もちろん解答見ながらだから、解けはする。だけど、いま手元に教科書がなかったりするせいで、かなり手探りな感じになって、あまり知識が付いている感じがしない。いま手元にあるのは、「半導体工学」と「物性工学の基礎」と電磁気学と数学のよく分からない本だけ。電磁気学は数学の要素が多いから後回し。ということで、物性基礎と半導体・固体電子工学の問題からやっていくとこにした。

 平成二十五年の物性基礎はすんなり解けた。数少ない私がまともに勉強していた範囲だった。次に半導体・固体電子工学の問題だが、これは全く分からなかった。たしか半導体工学の単位は取ったのだが、過去問暗記の一夜漬けだったので、本当に何も覚えていない。教科書を読みながら解こうと思い、その該当ページを見てみた。しかし当然ながら、前提知識がないので、該当ページを見ただけではわからない。結局最初の章から読み進んでいくと、これが結構面白いことに気づく。これにもっと早く気づいていれば、学生実験で班員に呆れられることもなかったのだろうなと考えた。

 月曜から日曜を一週間として、今週も残すところあと二日。いまのところ解いた問題の数は八問。お世辞にも順調とは言えない。百円セールで買ったCoD WWⅡに二日ぐらい取られたりしたのが主な原因だろうな。ゲームなどしてる場合じゃないし、ブログを書いている場合でもない。

 

 このブログはアニメや映画、小説の話が中心になるだろうと前に言いましたが、初手がこんな話になってしまいました。アマプラで期限が切れそうだった「砂漠の鬼軍曹」を見たりしたんですが、特に言うほどの感想はないので、映画とかの話はまたの機会にしようと思います。

日記を始めてみる

日記をつけることにした。

主に映画とかアニメとか本の話が中心になると思う。

作品を見たときの感想とかを残して後から見返したら面白いんじゃないかなって、そう考えた。そもそも感想なんてものは感想を持とうと考えないと生まれないものなんじゃないだろうか。今まで私は流れるように作品を見てきた、怠惰な消費者というやつだ。映画を観た時も気にするのは脚本ばかりで(脚本すら気にしていたか怪しいが)、テクスチャを楽しむということを、感動を探すということを意識的にしてこなかった。私は怠惰を脱したい。せっかくのこの時代、一生のうちに視聴しきれないほどの作品に数百円で手が届く時代、に生きているのだから怠惰なままではもったいないだろう。

と重く言ってみたものの、しばらくは本当に適当に書いていこうと思います。まずはこの日記を続けることが最優先ってことで。