TENET テネット 感想

 久しぶりに、デカい映画館でデカい映画を観てきました。クリストファー・ノーラン監督の「TENET テネット」。理系の友人に行こうと誘われて行ったのですが、別の友人の「理系はノーラン好きがち」という言葉もあながち間違いじゃないなと。(この映画は別に理系映画ってわけではないけど)

 

 まずこの映画の邦題、付けた人の配慮が感じられて面白いですよね。「テネット」じゃなくて「TENET テネット」。おそらく「TENET」の回文を維持しつつ、日本人にもわかるように読み方足したらこうなったんでしょうね。

 

 わからない映画と言われているこの作品ですが、実はそんなことない。話自体はすごく分かりやすい冷戦スパイ映画です。わからないと言っている人は、話がわからないんじゃなくて、何故そうなっているのかわからないだけじゃないでしょうか(なんでこうなってるのかを映画を考えながら見たら、何もかもわかならくなりそう)。どうなっているのかわからないけど、何が起きているのかはわかる、ノーランはこの作品をそれで映画として成立させています。でもこれ、早い段階で作中で答えを与えられているんですよね。何故そうなっているかは理解しなくていいと。とにかく未来からそういう技術が来たから感覚的に上手く使えと。そういうものだと受け入れれば、この映画はわからない映画から一気にわかりやすい映画になります。一番の難所である、最後の敵味方、進行逆行入り乱れの戦いも、色分けされてて理解しやすいように出来てるじゃないですか。(麻雀のルールを知らなくても「咲-Saki-」を楽しめるみたいにね)

 何故そうなっているのかを理解しなくてもいいと言いながら、理解しようとするなら理解できるようには作っていると思います(信じてるだけとも言う)。この映画において、全く本質ではないけど、一つ一つの動きを逆行か進行か考えるのも面白そうですね。色々な設定も、熱力学や統計力学に沿って出来ているんじゃないかな。わからないけど。

 

 この映画でちょっと「おおっ!」っとなったことがありまして。「逆行」が可能となった世界では、なんと情報を持っていることが不利に繋がるんですよ!従来のスパイ映画と言ったら、情報の奪い合いみたいなところがあったと思うんですけど、この映画ではその情報の扱い方が真逆で面白かったんですよね。時間だけじゃなくて情報の扱いまで逆転させてしまうのかと。そのことをことさら主張せず、スマートに見せてしまうところが格好いいですね。