ラストムービー 感想

 デニス・ホッパーの「ラストムービー」を見てきた。友人に連れられて劇場に足を運んだのだけど、これまた面白い映画だった。話の導入はこんな感じ。

 

 その地でのハリウッド映画の撮影がクランクアップを迎えた。役者もスタッフも皆アメリカに帰ったが、スタントマンのカンザスはひとり残った。彼は現地に女を作り、しばらく幸せな日々を過ごしていた。そんなある日、神父に言われて街を見てみると、何やら異様な雰囲気に包まれていた。道の真ん中で人と人とが殴り合い、そのまわりで祭りのように人々が大騒ぎをしている。神父は、あの暴力は君たちアメリカ人が持ち込んだものだと言う。あれは映画祭りで、街の人たちは映画撮影の真似をしているのだと。神父は今すぐやめるよう説いた。カンザスは芝居の暴力と本物の暴力の違いについて教えた。しかし、映画の暴力に当てられた彼らは止まらない。カンザスは次第に狂気に飲み込まれていく。

 

 序盤の映像はとにかくごちゃごちゃしていた。葬式、教会、祭り、銃撃戦、パーティ、聞こえてくるのは知らない言葉。断片的にしか状況はわからないのだが、異国ということはわかる、そんな状態。

 

 終盤近くの、カメラが揺れ、火花が回り、カンザスが逃げ回るシーンは、本当にホラーなのだが、「おい、傷がないぞ」とネタばらししたあとは一気にコメディになる。酔っぱらいという生き物はどこまでも真剣に生きているのだが、他人の視点を通してみると、途端に滑稽に映るのだ。

 自分が泥酔してるときを想像してほしい。きっとそんなにおかしくなっている自覚はないと思う。泥酔しててもちょっと陽気になったぐらいで思考はちゃんとできていると自分ではそう思っているだろう。逆に、自分ではなく友人が泥酔しているときを思い出してほしい。彼らは本当に支離滅裂だ。急に全く脈絡のない話を大声でしだしたりするし、放っておくとマンションのオートロックを開けるために、秘密のコマンドがあると言い出し、インターホンをでたらめに押し出したりする。この映画には、泥酔時の自分の頭の中と、飲み会で友人が泥酔して馬鹿なことをしだしたときの笑いがある。

 

 私の好きなのは、監督役が一生懸命説明してるのを、カンザスが「その動きお祈りみたいだな」と茶化し、泥酔した神父が十字架で突っつくシーンと最後の金鉱の話。

 私を映画館へ連れて行った友人のお気に入りは、終盤のカンザスが走って転んで立ち上がるシーン(たしかにあのシーンは格好良かった)と、最後の「神は遍在する」だ。詩的なとこが好きらしい。

 

END!